「思考」は、決して曖昧なものではありません。それは、あるルールに従って厳密に動く、論理的なシステムです。
ここでは、その思考のシステムを、誰にでもわかるように分解し、再構築します。この理論を理解すれば、あなたが今まで無意識に行っていた「考える」という行為の、本当の仕組みが見えてきます。
1. 思考を構成する公理と定義
まず、この理論を成り立たせるための、最も基本的な要素を定義します。
公理
- 公理①(感覚): 人間は、外界や自分自身の状態を「何か」として感じ取る性質を持っています。
- 公理②(同一性): 人間は、二つの対象が「同じ」か「違う」かを識別する感覚を持っています。
- 公理③(記憶): 人間は、経験した感覚を保存する能力を持っています。これを「記憶力」と呼び、保存された感覚を「記憶(q)」と定義します。
- 公理④(想起): 人間は、保存された「記憶(q)」を呼び出す能力を持っています。
定義
- 疑問(p): 二つの対象が「違う」と感じる感覚。思考は、この「疑問(p)」が発動したときにのみ始まります。
- 思考の連鎖: 「疑問(p)」を解消するため、「記憶(q)」を想起し、新しい感覚(r)を生み出す一連のシステムです。この連鎖全体を「思考」と定義します。
- 理解する: 思考の連鎖が、ある感覚と記憶の本質的な性質が「同じ」であるという感覚に達して終了すること。
- 答え: 理解に至るまでの、すべての感覚(p, r…)と想起された「記憶(q)」の連鎖全体。
2. 思考の分岐システム
この定義を基に、思考がどのように進むかを見てみましょう。思考は、以下の2つの方法で進行します。
パターン1:記憶の想起による連鎖
これは、あなたがすでに持っている知識で解決できる場合に起こる思考の連鎖です。
- 「疑問(p)」が発動します。
- あなたは、過去に蓄積した「記憶(q)」を想起します。
- その「記憶(q)」が、「疑問(p)」と「同じ」であると判断できる場合、思考は終了し、理解に至ります。
これは、すでに知っていることを思い出すだけの、「解決策が既知」の思考です。
パターン2:新しい感覚の創造による連鎖(分岐)
これは、あなたが持っている知識だけでは解決できない、真の「思考」が必要な場合に起こる連鎖です。
- 「疑問(p)」が発動します。
- あなたは、過去の「記憶(q)」を想起しますが、その記憶だけでは「疑問(p)」を解消できません。
- ここで、あなたは「異なる」という感覚に基づいて、新しい感覚(r)を生み出します。例えば、試行錯誤をしたり、誰かに質問したり、本を読んだりします。
- この新しい感覚(r)が、最初に発動した「疑問(p)」と「同じ」であると判断できるまで、新たな記憶(q’)を想起したり、新しい感覚(r’)を生み出したりする連鎖が「分岐」しながら続いていきます。
この「新しい感覚を生み出すプロセス」こそが、創造的な「思考」の核心です。
3. 結論:思考の真の価値
この形式的な定義からわかるのは、「思考」というものが、無数の分岐と連鎖から成る、個人に固有のシステムであるということです。
このシステムを理解し、適切に活用すること。そして、新しい感覚を生み出す連鎖を恐れずに実行すること。これこそが、あなたが「勉強」で得た知識を土台に、人生のあらゆる「疑問」を解き明かすための、真の「武器」となるのです。
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